若手の会

ランチ交流会                         

10月29日(火) 12:15~13:15 タワーホール船堀 3F 307

モデレーター

渡邉 博文(ウィズメーティス)
高橋 一敏(味の素)
加藤 幸一郎(九州大学)
渡邉 怜子(大阪大学)
熊澤 啓子(帝人ファーマ)
増田 友秀(東レ)
宮野 奈津美 (帝人ファーマ)
清水 祐吾(理研)
土井 雄貴(田辺三菱製薬)
池田 和由(理研・慶應義塾大学)

演者

江崎 剛史
(滋賀大学)

化学・生物分野に情報科学を適用する分野融合的なCBI学会において、若手研究者の交流とスキルアップを支援するため、2017年にCBI若手の会を立ち上げました。それから7年、講演会やフォーカスとセッション、学会誌の編集など、様々な角度から若手の交流に向けた活動をしてきました。本大会期間中も「Meet the legend」や「ウェットからドライへ移行した研究者」などを企画しています。
この交流会では、これまでの活動を紹介するとともに、今後、若手の会が向かう方向性について議論し、さらなる活動に向けた意見交換や交流の場となることを期待しています。

Meet the legend

10月30日(水) 14:00~15:30 タワーホール船堀 3F 307

日本のバイオインフォマティクスや創薬研究において、多大な貢献と成功をされたレジェンドを講師としてお招きし、ご講演頂く企画であり、今回が第3回になります。
今年お呼びするレジェンドである美宅成樹先生は東京大学大学院を修了された後、東京大学、東京農工大学、そして名古屋大学、豊田理化学研究所で教育・研究に従事され、2006年には日本生物物理学会会長も務められました。研究では一環して「生物の原理はどうなっているのだろうか?」という疑問を軸に研究をされ様々なシステム開発や機能解明に取り組まれました。特に、膜タンパク質を予測するシステムSOSUIの開発は先駆的な有名なお仕事(Google scholar citation: 2300以上)であり、このシステムを使って生物のORFを解析し、膜タンパク質が全タンパク質の内でほぼ一定の割合で存在していることを明らかにされたのは、生物学に取って大変重要な知見です。本CBI学会でも例年「オミックスの原理研究会」の企画を通し、生物の原理的な問題を考えることの大切さについて議論されています。また、分子生物学やバイオインフォマティクスなどに関する大学生、大学院生向けの教科書から、小学生向けの書籍まで、多数の著書のご執筆をされ、後進の育成にも大変熱心に取り組まれていらっしゃいます。

モデレーター

渡邉 博文(株式会社ウィズメーティス)
江崎 剛史(滋賀大学)

演者

美宅 成樹
(名古屋大学名誉教授)

「生物の物理的原理を求めて」

若手研究者の方々に対しては、研究結果である「生物の物理的原理」についても、もちろん紹介したいのですが、そこに至ったプロセスや考え方のヒストリーについて参考にしていただければと思っています。私は色々な大学・研究所に席を置き、学問分野としては物理学、化学、生物学、情報科学、機械システムの部門で、『生物とは何か?』を研究してきました。そして、それらの分野が大事としている考え方を吸収し、生物を俯瞰的に見る見方を養ってきました。もう一つ、全く異なる側面のヒストリーも私の研究に大きな影響を与えました。それは、2回の脳梗塞の経験です。1回目の脳梗塞は左脳の言語野付近に起こり、ウェルニケタイプの失語症を引き起こしました。それで、私はイメージの領域で考えるようになり、そのことで今の研究に大きく進展したと感じています。
さて、物理的な原理を追求する研究は膜タンパク質の予測システムSOSUIの開発から始まりました。当時、研究室では実験と計算を並行して行なっていて、計算のアイデアを確かめるために実験を行なっていました。このことが、物理的なパラメータによる高精度予測に反映されました。その後はヒトゲノム計画とゲノム解析の進展と相まって、ゲノム中の膜タンパク質の割合が一定である事実、それがヌクレオチド組成によって決まっている等が次々に明らかになりました。最後に、ゲノム配列から得られるヌクレオチド組成(コドン位置毎)の空間が、『生命の相図』という概念に自然につながりました。そして、『生命の相図』から進化を見ると、色々の謎が解けることが分かりました。これらの一連の研究成果は、Springer Natureからの本に今年2月に出版しました。興味があれば、読んでいただければ幸いです。

Shigeki Mitaku, Ryusuke Sawada “Evolution Seen from the Phase Diagram of Life” Springer Nature, Singapore, Feb. 2024. https://doi.org/10.1007/978-981-97-0060-8

★レジェンドの美宅先生に事前に募集していた質問に答えていただくのに加え、会場からの質問も受け付けます。

FS09 若手の企画フォーカストセッション 

計算科学業界のキャリアチェンジについて語ろう~ウェットからドライ、アカデミアから企業~

10月31日(木) 14:00〜15:30 タワーホール船堀3F 307

CBI学会には、企業とアカデミアの研究者が約半数ずつ登録しており、ドライ研究者だけでなくウェット研究者も多く参加しています。これまでCBI若手の会では、CBI学会誌のコラム「CBIキャリア」を通じて、アカデミアと企業両方を経験した先生方のお話を紹介してきました。本日は、コラム「CBIキャリア」の内容を紹介するとともに、ウェット研究/ドライ研究やアカデミア/企業についてのアンケート結果を紹介いたします。また、ウェット研究とドライ研究両方の研究経験を持つ研究者の方々の経験談を聞かせて頂き、それぞれの違いとキャリアやワークライフバランスに与える影響などについて考えます。特に、ドライ研究に関心のある研究者やキャリアチェンジを検討している研究者、将来研究者になる若手の方々が、より意識的に将来のキャリア選択を行い、自分に合った働き方を見つけるための参考になることを目指して企画しました。

モデレーター

渡邉 怜子(大阪大学 蛋白質研究所)
熊澤 啓子(帝人ファーマ株式会社
高橋 一敏味の素株式会社

演者

FS09-01

渡邉 怜子
(大阪大学蛋白質研究所)

「ウェットからドライへ:アカデミアでの研究分野転向の体験談」

博士号取得までは完全にウェット研究に従事していましたが、研究を進める中でAIの重要性を感じ、ドライ研究に転向しました。本発表では、転向の背景やその後アカデミアで研究を続けていく上でのキャリアとワークライフバランスへの影響、そしてウェットとドライ研究の相互補完性についてなどをお話しします。

FS09-02

道木 和也
(小野薬品工業株式会社)

「AIが導く創薬キャリア」

私は2018年に天然有機化合物の合成研究で博士号を取得しました。その後、現職でプロセス化学と医薬品化学の研究に従事し、2023年からは計算化学者として創薬研究を行っています。私がウェット研究からドライ研究へキャリアチェンジしたきっかけは、AIベンチャーとの創薬提携で得た知見を自社の創薬研究に活用したことが大きな要因です。本講演では、私のキャリアを通じて得た教訓を紹介するとともに、研究の輪を広げることの大切さを皆さんにお伝えします。