ランチョンセミナー

LS01 株式会社モルシス

創薬モダリティ研究を加速させるインシリコ解析プラットフォーム:MOEとPSILO

10月29日(火) 12:15〜13:15 タワーホール船堀4F 研修室

創薬モダリティの多様化に伴い、様々な分子のデザインに対応した計算化学環境と膨大な生体高分子の構造を管理するための統合データベースが求められています。
計算化学環境では、多様な計算化学手法が統合されていること、幅広い分子系の解析に対応していること、多くの分子について連続処理できること、各研究者の課題にスペシャライズしたプログラムの開発が柔軟に行えること、などが要望されます。MOE (Molecular Operating Environment) は、これらの要望を実現する統合計算化学プラットフォームです。MOEには、低分子、ペプチド、抗体、核酸などのモデリング機能、Structure/Fragment/Ligand Based Drug Design、QSAR/QSPR解析、ファーマコフォア解析、タンパク質モデリング/デザインなどの豊富な計算化学アプリケーションが搭載されています。MOEの分子構造データベースは、低分子から生体高分子まで幅広い分子が登録可能であり、分子の前処理、特徴量計算、統計解析、機械学習を連続処理することができます。さらに、使用目的や使用頻度にあわせたインターフェースや、独自のプログラミング言語 SVL を用いた機能拡張により、様々な研究者が目的の解析を実現できます。
他方で、インシリコデザインを効率的に行うためには、一元管理された生体高分子のデータベースから標的タンパク質など目的とする生体高分子の立体構造を検索し、様々な観点からその構造を解析できることが重要です。また、研究対象のタンパク質構造情報と知見を研究者間で共有すると同時に、研究プロジェクトに応じてデータの参照および編集権限を管理することも望まれます。PSILO (Protein SILO) は、これらを可能にするタンパク質立体構造情報データベースシステムです。公共およびインハウスのタンパク質立体構造データを一元管理して、多様なクエリーで検索することが可能であり、研究者間の情報共有を支援します。
MOEとPSILOをシームレスに連携し、研究者のための共通のインシリコ解析プラットフォームとすることで、創薬研究の加速化・効率化を図れます。本セッションでは、創薬モダリティとして注目されている抗体と標的タンパク質分解誘導薬にフォーカスし、MOEの対応アプリケーションとその活用事例、およびPSILOについて紹介します。

「MOE 抗体設計アプリケーション」
近年、二重特異性抗体、一本鎖抗体、VHH抗体、抗体薬物複合体など多様化する抗体の開発を効率化するためにインシリコ技術が益々重要になっています。抗体医薬品の開発可能性の評価には、抗原に対する親和性・選択性の調整だけでなく、抗体自身の溶解性・凝集性・粘性などの物性の調整や、化学的修飾を受けやすい部位の特定も重要です。MOEは、多様な抗体モデリング、タンパク質デザイン、エピトープマッピングなど、抗体のデザインに必須な解析を行うためのアプリケーションの他、表面パッチ解析、物性推算、化学的修飾候補部位の検出といった抗体の開発可能性の評価に活用できるアプリケーションも統合しており、探索研究から製剤研究まで幅広く支援します。

「MOE 標的タンパク質分解誘導薬開発用アプリケーション」
標的タンパク質分解誘導薬 (Targeted Protein Degrader, TPD) は、細胞内のタンパク質分解機構を利用して標的タンパク質を選択的に分解誘導する化合物であり、キメラ化合物であるPROTAC/SNIPERやE3モジュレーター (分子糊) などが知られています。従来の低分子薬が標的とすることができないタンパク質も標的にできることから、近年、注目を集めている創薬モダリティです。TPDが効果を発揮するには、細胞内で安定な三元複合体(標的タンパク質–TPD–E3リガーゼ)を形成することが必須であり、合理的なTPDのデザインには、この複合体を適切にモデリングすることが重要です。MOEのProtein Degrader Modeling ToolsとHeterobifunctional Degrader Analysis Toolsを用いることで、適切な三元複合体の候補構造の構築、リンカー候補の検討、新規TPD構造の提案が可能です。

「PSILO」
クライオ電子顕微鏡法などのタンパク質立体構造解析技術の進歩や、AlphaFoldなどのAIを活用した高精度なタンパク質立体構造予測ツールの普及などにより、タンパク質立体構造データは日々増加し続けています。PSILOは、そのような様々なタンパク質立体構造データの一元管理と共有を支援します。キーワード、アミノ酸配列、リガンド構造、3D相互作用、類似ポケット構造など、多様なクエリーによる複合的な検索を行い、検索結果を専用のビューアーで整理して見やすく表示できます。タンパク質全体、ポケット構造、リガンド構造、または抗体やキナーゼなどのファミリーの共通構造を基準に重ね合わせることができ、重ね合わせの結果をEメールで送信して、研究者間で容易に共有できます。登録した立体構造について、コメントフォーラムに任意のコメントを書き込み、研究者間でやり取りを行うこともできます。

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モデレーター

池上 貴史(株式会社モルシス)

演者

LS01-01

阿部 紘一
(株式会社モルシス)

LS02 OpenEye, Cadence Molecular Sciences

リード化合物最適化プロセスを再考する:ポーズの安定性判断から効率的な結合自由エネルギー計算まで

10月29日(火) 12:15〜13:15 タワーホール船堀4F 401

リード化合物の最適化プロセスにおいて計算が貢献できる重要なことの1つは、タンパク質標的に対する低分子の結合親和性を予測することです。
当社のクラウドネイティブモデリングプラットフォームOrion®では、分子プロファイリングのための手法の一連のステップとして、構造ベースのバーチャルスクリーニング、ポーズ予測、ポーズ安定性評価、また非平衡スイッチング(NES)を実装し、同種シリーズ内の相対的な結合親和性の予測を可能にしています。
本プレゼンテーションでは、これらの異なる手法を組み合わせることで、プロジェクトにおいてどの分子のアイデアを優先させるべきかを効率的に決定する方法を紹介します。特に、自動化された短時間のMD(Short Trajectory MD)によるポーズ安定性解析と軌跡の特性解析機能は、次のステップである相対結合自由エネルギー評価に進むべき候補を選択するのに役立ちます。そしてNESは、合成に最も有力な分子の優先順位付けに役立ちます。競合ソフトウェアと直接比較した結果、 NESは同様の予測精度を提供する一方で、 計算効率が非常に高いことが分かりました。最近の力場の改善によって精度がどのように向上したか、また、計算する相対的な親和性の選択が精度とコストの両方にどのような影響を与えるかをお話しします。最後に、クラウド利用コストを更に削減しながら、多くの候補分子を評価するための実用的な利点(何を作り、何を作らないかについての具体的なガイダンス)についても、触れさせて頂きます。

アプリケーションの紹介(クリックして拡大

モデレーター

近田 千春(日本ケイデンス・デザイン・システムズ)

演者

LS02-01

Gunther STAHL
(OpenEye, Cadence Molecular Sciences)

LS03 株式会社Elix

Elix Discovery最新版のデモ および 創薬における連合学習の応用

10月29日(火) 12:15〜13:15 タワーホール船堀4F 407

株式会社Elixは「創薬を再考する」をミッションとしたAI創薬企業で、「メドケムが本当に使える」をコンセプトに開発したAI創薬プラットフォームElix Discoveryを主軸とした事業を展開しております。
Elix Discoveryは、AI創薬に必要なAIモデルを搭載し、直感的に使用できるユーザーインターフェースを備えています。簡単な操作で自動で最適な予測モデルを作成できるだけでなく、ドッキングやファーマコフォアを活用したSBDD的なアプローチの構造生成も可能です。また機械学習やケモインフォマティクスが初めての方から専門家の方まで幅広く対応したシステムとサポート環境をご用意しております。さらにお客様からのフィードバックをスピーディーに反映することで、日々進化しております。
本セミナーでは、Elix Discoveryの最新版がどのような製品か、実際の画面を用いてご説明いたします。特に可視化・分析ツールについては昨年のデモと比べて大幅なアップデートとなりますので、是非ご覧ください。
またElixは京都大学と共同開発した連合学習の技術を用いたオープンソースライブラリ「kMoL」をリリースし、その後もアップデートを続けております。2025年度にはその技術が事業化されます。そうした流れに伴い、改めて当該技術の概要と創薬における応用例も合わせてご紹介いたします。

モデレーター

波戸 園美(株式会社Elix)

演者

LS03-01

井上 貴央
(株式会社Elix)

LS04 シュレーディンガー株式会社

OPLS5(分極力場)及び解離速度定数(koff)の予測技術のご紹介

10月29日(火) 12:15〜13:15 タワーホール船堀4F 406

SchrödingerではFEP+に代表されるような分子動力学ベースでの創薬支援ツールに強みがあり、現在においても精力的に新機能開発を行っております。2024年においては、以下の代表的な新機能がリリースされました。
1. OPLS5: 分極電荷が採用された高精度力場
2. unbinding kinetics workflow: リガンド-レセプターの解離速度定数(koff)の予測
3. FEP+ protocol builder: 機械学習によるFEP+計算条件の最適化
4. Lambda Dynamics enhanced protein FEP: 残基改変に伴う自由エネルギー変化の高効率な予測
本セミナーではOPLS5とunbinding kinetics workflowを中心に新機能の技術的な内容や精度検証した結果について解説いたします。

モデレーター

井上 鑑孝(シュレーディンガー株式会社)

LS05 エルゼビア・ジャパン株式会社

強固なデータ基盤によるLLMと予測モデルの強化

10月30日(水) 12:00〜13:00 タワーホール船堀4F 研修室

データサイエンスやライフサイエンスの研究開発における最先端の予測モデルや大規模言語モデルは、ほぼ全てがデータを基に構築されている。しかしながら、これらのモデルでデータ基盤が高品質で信頼性があり、正規化され、再利用できるようにすることの必要性は、見落とされがちな課題である。この講演ではエルゼビアと自社の内部データを機械学習に最適な状態にし、既存のオントロジーやナレッジグラフを活用するための経験や方法について焦点を当て述べる。

モデレーター

伊橋 彩(エルゼビア・ジャパン)

演者

LS05-01

Eric GILBERT
(Life Science Solutions, Elsevier)

「強固なデータ基盤によるLLMと予測モデルの強化」

LS06 アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社

AWSとの共同研究事例紹介:量子コンピューティングの中分子創薬への活用検討

10月30日(水) 12:00〜13:00 タワーホール船堀4F 401

近年、従来の低分子医薬品および高分子バイオ医薬品に加え、細胞透過性や標的選択性の観点から中分子領域への注目が高まっている。創薬分野において、量子化学計算は分子設計の鍵となる重要な役割を担っており、量子コンピューティングの最先端技術が創薬プロセスを大幅に加速すると期待されている。本講演では、中外製薬が量子化学計算における量子コンピューティングの可能性を探索する上で、どのように AWS とコラボレーションしたのかを紹介する。

モデレーター

片岡 勇人(アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社)

演者

LS06-01

針原 佳貴
(アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社)

「AWS における量子コンピューティングの取り組み」

AWS では、Center for Quantum Computing における量子コンピューティングの研究開発、マネージドサービス Amazon Braket による量子ハードウェアへのアクセスおよび量子・古典ハイブリッド計算環境の提供、Amazon Quantum Solutions Lab によるお客様のユースケース探索などに取り組んでいます。本講演では、これらの概要について紹介します。

LS06-02

荒川 晶彦
(中外製薬株式会社 創薬化学研究部)

「AWSとの共同研究事例紹介:量子コンピューティングの中分子創薬への活用検討」

中外製薬は、技術ドリブンの創薬を掲げ、その一環として独自に開発した環状ペプチドによる中分子創薬を展開している。中外製薬の環状ペプチドは、標的分子に対する高い結合親和性と良好な膜透過性を有する。そのため、低分子化合物や抗体では困難な細胞内の標的分子を経口投与で狙うことができ、新たな創薬手法になると期待している。一方、量子コンピューティングは、従来の計算機では実行困難な問題を解決できると期待されており、これを活用して中分子創薬研究を加速できないか検討している。その中の1つの取り組みとして、環状ペプチドのドッキングシミュレーションへの適用に関する技術検証を Amazon Quantum Solutions Lab (QSL) と実施した。結果として、本事例では量子コンピューティングの優位性を確認することはできなかったものの、当該技術の現状や課題を早期に把握することができた。本セッションでは、Amazon Web Services (AWS) における量子コンピューティングの取り組みや研究支援体制を概観したうえで、中外製薬における AWS 活用事例を紹介するとともに、技術検証において AWSが選択された理由や今後期待する点について紹介する。

LS07 株式会社Preferred Networks

Relative Binding FEP受託計算サービス(P-FEP)とAI創薬ワークフロー

10月30日(水) 12:00〜13:00 タワーホール船堀4F 407

Preferred Networksでは、深層学習や分子シミュレーションを高度に応用したインシリコ創薬技術の開発に取り組んでいます。その成果の一つとして、今年4月より結合自由エネルギーを高精度に計算するRelative Binding FEPの受託計算サービスP-FEPの提供を開始いたしました。また、P-FEPの予測精度向上を目指し、深層学習ポテンシャル(Neural Network Potential; NNP)のひとつであるPreferred Potential (PFP)を用いた、低分子有機化合物の分子力場改良にも取り組んでおり、その成果の一部をご紹介します。
本ランチョンセミナーでは、主に以下に関する講演を行います。
- P-FEP (Relative Biding FEPの受託計算サービス)のご紹介
- P-FEPにおけるPFPを用いた力場改良事例のご紹介
- P-FEPを用いた創薬ワークフローのご紹介
- その他弊社の取り組み事例

Preferred Networksでは、P-FEP以外にもUltra Large Scale Virtual Screeningを用いたヒット探索、拡張アンサンブル手法などを用いた高度な分子動力学シミュレーション(MD)によるタンパク質の動的解析、深層学習/機械学習の創薬応用など、様々な共同研究を随時承っております。セミナーでは、上記講演内容以外に関わる質問等もお受けいたしますので、是非本ランチョンセミナーにご参加ください。

<参考情報>
P-FEP: https://tech.preferred.jp/ja/blog/pfep-launch/
Matlantis™: https://matlantis.com (PFPをコア技術として使用している汎用原子レベルシミュレーター)

受託計算サービスP-FEPの紹介(クリックして拡大

モデレーター

佐藤 秀行(株式会社Preferred Networks)

演者

LS07-01

山岸 純也
(株式会社Preferred Networks)

LS07-02

田村 勇之進
(株式会社Preferred Networks)

LS07-03

武本 瑞貴
(株式会社Preferred Networks)

LS08 株式会社ワールドフュージョン

次世代のデータ解析:LSKBとMicrobiome Explorerが拓く新しいライフサイエンスの世界

10月30日(水) 12:00〜13:00 タワーホール船堀4F 406

次世代データ解析ツールの紹介本セミナーでは、ライフサイエンス分野におけるデータ解析の革新を目指したツール、LSKBとMicrobiome Explorerの最新機能をご紹介します。
LLMによる文献解析機能の強化し、LSKBの提供する疾患、遺伝子、遺伝子変異、化合物のクラス分類の刷新と、Microbiome Explorerでは、細菌叢と疾患との関連解析に焦点を当て、研究者の皆様に新たな知見を提供します。

モデレーター

株式会社ワールドフュージョン

演者

LS08-01

緑川 淳
(株式会社ワールドフュージョン)

1. LSKB 最新バージョンの紹介
- 概要: LSKBは、ライフサイエンス分野のデータを統合的に扱うためのプラットフォームです。
最新バージョンでは、遺伝子、タンパク質、疾患などのデータに加え、BERT(MNLI)からLLMによる文献解析へのアップデートを行い、より精度の高いクラス分類機能を提供します。これによって文章から機能の掘り起こしを行えるようになりました。より広範囲でのLSKBの利用が期待できます。
本セッションでは、これらの新機能について詳しく説明します。

2. LSKBにおけるLLMによる文献解析機能のアップデート
- 概要: 昨年導入されたBERT(MNLI)による文献分類機能を、LLMに基づく新しい解析機能にアップデートしました。この機能強化により、予め行われるクラス分類が文献からの情報抽出を高精度かつ迅速に行えるようになります。
本セッションでは、このアップデートの詳細とその応用例を紹介します。

3. Microbiome Explorerの開発とその可能性
- 概要: Microbiome Explorerは、LSKBのオントロジー辞書やテキストマイニングとLLMをフルに活用した、腸内、皮膚、口内の細菌叢と疾患やフェノタイプの関連性を解析する新しいクラウドシステムです。これにより、細菌叢の疾患に関わる機序、寄与する細菌の代謝物や毒性などが期待できます。
本セッションでは、細菌叢における細菌の機能や組織別の関連性について、LLMを用いた文献解析結果をもとにしたクラス分類の手法とその結果を紹介します。

LS09 アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社

塩野義製薬のAWSを利用したタンパク質立体構造予測・デザインの取り組み

10月31日(木) 12:00〜13:00 タワーホール船堀4F 研修室

近年、効率的な創薬シーズの探索を実現するために、スケーラブルな計算環境・大規模なストレージを実現できるクラウドへの関心が寄せられている。中でも、タンパク質の立体構造予測・設計の領域は飛躍的に発展しており、次々と新たな手法が提案される中で、素早くソフトウェアを検証し創薬プロセスに取り入れる必要がある。
本講演では、塩野義製薬の小倉様をお招きし、実際にタンパク質構造解析の環境を AWS 上に構築した事例を紹介いただくとともに、AWS からは業界特化したサービスや簡単に始められる実装テンプレートを紹介する。

モデレーター

片岡 勇人(アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社)

演者

LS09-01

石尾 千晶
(アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社)

「ドライ解析環境を AWS で構築し創薬プロセスに組み入れるには」

タンパク質構造解析の領域は飛躍的に発展しており、AlphaFold2 を皮切りに、最近では NVIDIA BioNeMo のようなタンパク質に特化した大規模言語モデルも開発されている。新しいツールを単体で使うのではなく、複数のツールを用途に応じて使い分け、一連の解析ワークフローとして既存の創薬プロセスに組み入れ自動化する必要性が高まっている。このように、ウェットな実験とドライな解析を橋渡ししデータを共有しながら相互にフィードバックする lab in the loop モデルによって、医薬品開発を加速させることが期待されている。
AWS では、タンパク質構造解析に活用できる業界特化のサービスや、ワークフロー構築のためのサービスの提供に加え、サービス同士を組み合わせた実装テンプレートも提供している。本セッションでは、AWS の最新サービスや、実装テンプレートを、国内外の顧客事例とともに紹介する。

LS09-02

小倉 圭司
(塩野義製薬株式会社 創薬化学研究所 ケモインフォマティクス)

「AWS を活用したタンパク質設計」

近年、様々な創薬プロセスにおいて機械学習やデータサイエンスの検討や導入が進み、数多くの成果が報告されています。創薬研究では、タンパク質の構造理解とその制御が重要であり、タンパク質に関連するインフォマティクスの研究が活発に行われています。タンパク質設計分野においては、機械学習を活用した de-novo 設計手法として、RFdiffusion1)やAlphaProteo2)が注目されており、従来の手法と比較して高精度な設計が報告されています。これらの手法は、複数の標的タンパク質に対して高いヒット率と強力な結合活性を示すタンパク質バインダーの取得に成功しており、さらに設計された予測立体構造が、実験的に取得された構造と一致していることも確認されています。
本発表では、タンパク質 de-novo 設計手法の検証を目的に、AWS にて RFdiffusion の insilico 再現実験を実施した結果と、AWS 上に構築したタンパク質関連インフォマティクス研究の計算基盤について紹介する。
1) https://www.nature.com/articles/s41586-023-06415-8
2) https://arxiv.org/abs/2409.08022

LS10 パトコア株式会社

AIが切り拓く革新的創薬の未来:併用療法探索と創薬インテリジェンスの最前線

10月31日(木) 12:00〜13:00 タワーホール船堀4F 401

本セミナーでは、最先端のデータ活用が創薬プロセスにどのような変革をもたらしているのか、具体的な事例を交えながら詳しく解説します。

1. がん治療における精密な薬剤併用戦略|Excelra社の先進的アプローチ
がん治療の効果を大幅に向上させる鍵として、薬剤の併用療法が注目されています。Excelra社は、この分野で革新的な方法を展開しており、副作用を抑えつつ治療効果を最大化するための薬剤ペアを特定しています。具体的なアプローチは以下の通りです。

文献マイニング:膨大な医学文献から有益な知見を抽出
de novo探索:新たな薬剤の組み合わせを体系的に探索
AI予測モデル:機械学習とin silico手法を用いて効果を予測
これらの手法を駆使することで、より効果的で安全な治療法が実現しています。

2. 知財戦略と研究開発の融合プラットフォーム|PatSnap Synapseの革新
PatSnap Synapseは、製薬業界のR&Dプロセスを根本的に変革する統合型インテリジェンスツールです。特許、学術文献、臨床試験データ、業界ニュースなど多岐にわたる情報を統合し、AIとコンピュータビジョンによる高度な分析を提供します。これにより、研究者や経営陣は迅速かつ精度の高いデータ駆動型の意思決定が可能になります。

メリット:
・170以上の法域における特許情報、化学構造、生物学的配列への一元アクセス
・生成AIのサポート(特許・文献の要約、Q&A)
・最新の研究動向、マーケットトレンド、競合動向の迅速な把握
・ホワイトスペースの特定による戦略の最適化
・ナレッジグラフによる複雑な情報の視覚化と深い洞察
デューデリジェンス機能によるM&A戦略の最適化とパートナーシップ評価

本セミナーを通じて、参加者の皆様は、最新のAI技術が創薬プロセスに与える革新的な可能性を理解し、それを自社の研究開発戦略にどのように活かすかのヒントを得ることができるでしょう。

モデレーター

宮崎 大祐(パトコア株式会社)

演者

LS10-01

エクセルラ

「革新的な薬物併用療法の発見へのアプローチ: がん治療における文献マイニングとde novo戦略」

腫瘍学における薬剤併用療法の利用は、治療効果を高めると同時に副作用を最小限に抑える強力な戦略として、ますます認識されています。異なる薬剤間の相乗効果を活用することで、癌治療において著しく改善された結果が期待できます。薬剤の組み合わせは、主に文献マイニングと薬剤スクリーニングデータに基づくde novo探索という2つの主要な戦略によって特定されます。

文献マイニングは、既存の併用療法の特定を可能にし、これらの既存の組み合わせを検証するための重要なツールとして機能します。一方、de novo探索は、特定の疾患に特化した新しい組み合わせの特定や、PD-1阻害剤のような固定された薬剤に適したパートナーの発見に焦点を当てています。
ネットワークベースのモデルや機械学習(ML)技術を含む予測手法は、効果的な薬剤ペアを発見する上で大きな可能性を示しています。最近の進歩により、MLの応用がさらに洗練され、最適な薬剤の組み合わせをより正確に予測できるようになっています。

in silico 手法は、このプロセスにおいて重要な役割を果たし、臨床的な検証に先立って潜在的な治療シナジーを迅速かつ費用対効果の高い方法で探索する手段を提供します。これにより、腫瘍学における併用療法の開発が加速されます。Excelraは、文献ベースのアプローチとde novoによる併用パートナーの特定の両方において専門的な知識を提供し、創薬コンビネーション発見のための包括的なソリューションを提供しています。

LS10-02

パトコア株式会社

「PatSnap Synapse:AIを活用した総合的な知財・研究開発支援ツールでイノベーションの加速を」

PatSnapは、シンガポール発の急成長企業で、AI技術を駆使した特許・技術情報調査ツールを提供しています。ソフトバンクやVertexも投資する注目のAIベンチャーで、優れたユーザーインターフェースと高度なデータ解析機能をリーズナブルな価格で提供しています。
本セッションでは、製薬企業の研究開発や知財部門にとって強力な支援ツールである「Bio」と「Synapse」に焦点を当ててご紹介します。
「Bio」は、製薬・バイオテクノロジー向けの特許調査ツールで、DNA、RNA、タンパク質配列の検索を通じて網羅的な特許情報を提供します。独自のAI技術によりFTO(他社知財侵害調査)を大幅に改善し、検索漏れを最小化します。特に「縮退配列検索」「化学修飾配列検索」、および複数配列の一括検索など、他にない独自の機能を持ち、「Analytics」との連携でより詳細な特許解析が可能です。
「Synapse」は、製薬業界向けのR&Dインテリジェンスツールで、医薬品に関する特許、文献、臨床試験などの情報を統合し、効率的な検索と分析を支援します。ホワイトスペースの発見、競合リスクの予測、特許戦略の構築を支援するほか、AIアシスタント「PatSnap Copilot」による特許要約やレポート作成、ナレッジグラフによる情報の視覚化が可能です。これにより、研究開発、ライセンス契約、M&A、マーケティングなどの意思決定を強力に支援します。特許情報の整理、最新の薬物開発動向、競合の特許戦略分析を効率化し、戦略的な意思決定をサポートします。

LS11 茨城県中性子ビームライン

創薬に貢献する中性子結晶構造解析

10月31日(木) 12:00〜13:00 タワーホール船堀4F 407

創薬研究には放射光やCryo-EMが利用されますが、タンパク質の放射線損傷が大きな問題となっています。一方、中性子は放射線損傷がほとんどなく、放射光やCryo-EMに比べて水素原子や水素イオン(プロトン)の位置が精度よく決定できるという特長があります。したがって、水素原子や水素イオンを介したタンパク質-リガンド間相互作用が詳細に解析できます。本セミナーでは、茨城県がタンパク質の中性子結晶構造解析用に設置した生命物質構造解析装置(iBIX)を紹介し、中性子が創薬研究にどのように利用できるかを紹介したいと思います。

モデレーター

柳岡 直樹(茨城県中性子ビームライン)
佐藤 衛(茨城県中性子ビームライン)
日下 勝弘(茨城県中性子ビームライン)