記念講演
10月28日(月) 17:30〜19:00 タワーホール船堀5F 大ホール
10月28日(月)17:30からの開会式に引き続き、下記の記念講演を開催いたします。記念講演後にレセプションを用意しておりますので、是非ともお越しください。
若手奨励賞受賞講演
CBI学会では、Chemo Bio Informatics の領域において独創的で優れた研究を成し遂げ、将来の活躍が期待される 若手のCBI 学会員もしくは学生会員に対して、CBI 学会若手奨励賞を授与しています。
2024年度は水野 忠快先生(東京大学大学院薬学系研究科)が受賞されたので、ご講演いただきます。
水野 忠快
(東京大学大学院薬学系研究科)
「化合物作用の理解に向けた恣意性のない数値化とパターン認識」
医薬品には開発者すら認識していない未知側面が多く存在する。我々は, そのような医薬品の「認識されていない側面」を理解するため, 医薬品の性質を恣意性なく数値化した後, パターン認識に供する戦略を推し進めている。パターンとして医薬品の性質をレーダーチャートのように可視化することで, 医薬品の性質を既知・未知問わず俯瞰し, 認識可能となる。医薬品の性質を可能な限り恣意性を排して記述する方法論にはどのようなものがあるだろうか。一つにオミクス解析など, 網羅性の活用が挙げられる。あるレイヤーに属する変数を余さず取得することで, 当該レイヤーについて解析対象を恣意性なく数値化できる。特に医薬品の作用は処理への生体応答と解釈できるため, 解析対象を処理した生体を試料とするオミクスデータが頻用されている。もう一つの方法として, 画像データなど, 感覚器に近いデータの活用が挙げられる。取得に際し, ヒトの認識が介在しないデータを対象とすることで, 恣意性の低い数値情報を得ることができる。一方, これらのデータ中で生命科学的意義を持つ情報は, 回転等に対し不変性を持つことが多く, 取得データは冗長である。この点, 深層学習による潜在表現抽出が有用となる。以上の考察のもと, 我々は医薬品に関する様々なデータ(トランスクリプトームデータ, 毒性病理画像, 化合物構造, 等)の数値化・パターン認識に取り組んでいる。本講演ではそれらのうち近年の成果を紹介する。
特別講演
CBI学会は、化学(Chemistry)、生物学(Biology)、情報計算学(Informatics)といった広範な学問分野を中心に、産官学の研究者が活発に交流する場として機能してきました。一方、日本バイオインフォマティクス学会(JSBi)は、バイオインフォマティクス分野の発展と振興、教育基盤の確立を目的として設立され、日本のプレゼンスを高めてきました。今回の記念講演では、CBIとJSBiの相互交流の一環として、共通テーマである「創薬研究」について、JSBi会長の山西芳裕先生(名古屋大学大学院情報学研究科)にご講演いただきます。
山西 芳裕
(日本バイオインフォマティクス学会(JSBi)会長、名古屋大学大学院情報学研究科)
「バイオインフォマティクスが拓く医療と創薬 」
近年の生命医科学では、疾患に関するゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボローム、フェノーム、インターラクトームなどのマルチオミックス情報が得られるようになり、生体内分子の網羅的解析が可能になった。同時に、膨大な化合物や薬物に関する生物活性情報、食品の健康効果情報も蓄積されている。このようなビッグデータ時代において、バイオインフォマティクスの重要性が高まってきており、多様なビッグデータの融合解析から医薬品開発や健康食品開発に繋げる役割が求められている。本研究では、疾患に関するマルチオミクス情報・臨床情報、生体分子に関する立体構造情報・シングルセルオミクス情報、化合物に関する化学構造・遺伝子発現・標的分子情報などの医薬ビッグデータを融合解析し、医療や創薬における様々な課題を解決するための機械学習アルゴリズム(AI基盤技術)の開発を行った。バイオインフォマティクスの視点から、疾患の細胞システムの制御を考える点が特色である。医薬品候補化合物の標的タンパク質をオフターゲットも含めて明らかにし、その作用機序をパスウェイレベルで考察することが可能になる。当日は、治療標的探索、医薬品候補スクリーニング、シナジー創薬学、医薬品分子構造設計、毒性・副作用予測、食品の健康効果の予測などへの応用例をいくつか紹介する。