大会企画
大会企画 CBI若手の会
Meet the legend
10月26日(木) 13:30~15:00 タワーホール船堀 4F 研修室
日本の創薬研究において、多大な貢献と成功をされたレジェンドを講師としてお招きしご講演頂きます。さらに講師の先生には、CBI若手の会で募集した質問リストをお渡ししております。その中から、これはと思う質問にご回答頂きつつ、次代を担う若手研究者に向けたメッセージを頂きたいと思います。今年は東海大学医学部の平山令明先生にご講演いただきます。
平山先生は、東京工業大学大学院を修了された後、Imperial college London博士研究員や協和発酵工業(株)主任研究員などを務められました。研究分野としては、医薬品の化学構造や、抗生物質など創薬研究にご尽力され多くの特許の発明者と成られました。東海大学に移られてからは、ASE-Dockをはじめとした分子モデリングソフトウェアの開発や、Druglikeness(分子の薬らしさ)に関する先駆的なご研究、最近では、アカデミア創薬への取り組みやHLAと化合物との相互作用など幅広い分野で活躍されてきました。また、創薬、X線回折、量子化学などに関して、大学生、大学院生向けの教科書からブルーバックスにまで及ぶ多数の著書のご執筆をされ後進の育成にも大変熱心に取り組まれております。
モデレーター
高橋 一敏(味の素株式会社)
増田 友秀(東レ株式会社)
渡邉 怜子(大阪大学蛋白質研究所)
渡邉 博文(株式会社ウィズメーティス)
加藤 幸一郎(九州大学)
演者
01
平山 令明
(東海大学医学部)
「一創薬研究者の半世紀」
私はX線結晶解析者として研究を始めました。比較的若い頃に、約300種類程の低分子化合物のX線解析を行い、分子構造および分子間相互作用の実相を学びました。この仕事を強力に支えてくれたのがCAD-4という、今は幻の名機になった4軸型自動回折計でした。この時代に得た経験は分子の構造に対する「勘」という、非常に有用かつ貴重な財産になりました。その後、種々の計算手法で最適構造が比較的簡単に得られるようになっても、可能な限り実測値であるX線構造にこだわりました。自然科学者は、まず自然の有りの儘の姿を可能な限りたくさん見る必要があり、その経験がその人の洞察力を養うと、私は信じています。 その後、創薬に研究の領域を拡大する中で、分子力学計算、分子軌道法計算、定量的構造活性相関解析およびデータベース構築・解析等を独学しました。そうした研究活動がその後のin silico研究に発展して行きました。その過程で、私は幸いにも統合計算化学システムMOEという素晴らしいソフトウェアと運命的な出会いをすることになります。MOEの出現によって、研究の速度と幅そして質が一気に向上しました。 東海大学医学部では、多くの優秀で熱意ある共同研究者に恵まれ、数多くの創薬研究に携わることができました。また、患者と真摯に向き合う研究心に富んだ熱意ある医師達との議論は、創薬研究者が何をなすべきかを教えてくれました。治療の最前線で、薬を正に武器として活用する医師達との意思疎通は非常に大切だと思います。 私が研究に関わった、慢性骨髄性白血病を対象とするPAI-1阻害剤の治験が現在第III相に入っています。またこの数年エネルギーを傾けてきた抗線維症薬の開発研究は非常に興味深い展開を遂げています。一方、私自身の加齢黄斑変性の進行阻止ができる分子を何とか見つけたいと孤軍奮闘もしています。私の創薬研究は現在進行形です。