開催趣旨

次世代ヘルスケアの実現に向けて、ゲノム情報や医療・健康情報の大規模データの利活用が国内外で急速に進んでおり、創薬においてはすでに全ゲノム情報の活用が強力なアプローチとなっています。実際、ヒト遺伝学が薬剤開発の成功確率を上げることが明らかになり、臨床試験Phase Iまでの開発品の中で、ヒト遺伝学的な背景がある薬剤の承認確率は約4倍とされています。Missense・Deleterious変異の時には、さらに成功確率が上がるといわれています。特に印象的なのは、2021年に米国FDAにより承認された新規薬剤の3分の2は、ヒト遺伝学のエビデンスに基づくものであったという報告です。すなわち、創薬においては、ゲノム情報を活用して、いかに開発期間を短縮し、成功確率を上げるかが重要課題になっています。

このような状況の中で、英国では Genomics EnglandがDiscovery Forumを形成し、製薬・臨床検査・バイオインフォマティクス等に関わる、日本企業を含む120社以上が参画して、ゲノム情報や医療情報を活用した創薬、次世代ヘルスケアの開発が始められています。国内でも、製薬企業を中心に日本人のゲノム情報基盤の拡充を求める声が高まり、東北大学東北メディカル・メガバンク機構が、文部科学省及び、同機構が製薬企業5社と形成した「全ゲノム情報と医療・健康情報の統合解析コンソーシアム」と協力して、前向きコホートに参加している一般住民10万人の全ゲノム情報と医療・健康情報の統合解析を通じた、革新的な医薬品開発を推進しています。

さて、2023年度のCBI学会大会では、大規模データを利活用し、情報科学、計算化学、創薬化学、生物学、医療などの分野で、次世代ヘルスケアの開発で活躍されている研究者、専門家の先生をお招きして、講演して頂きます。ウィズ・ポストコロナにより加速したDXを背景に、いかにゲノム情報、医療・健康情報の基盤を形成し、データサイエンス・AIを活用して、新しい医療・創薬の実現に挑むか、その戦略を一緒に考えましょう。最新の研究を共有し、そして、今後私たちが向かうべき方向性を議論する機会になれば幸いです。

医療・創薬関係者だけではなく、幅広く健康と暮らしに関係する産業界の方々、また、アカデミアの方々のご参加、さらに、大規模データを利活用して実際に次世代ヘルスケアの実現に取り組んでいる方々はもちろん、これから始めてみようという興味をお持ちの方々の積極的なご参加をお待ちしております。

CBI学会2023年大会
大会長 山本 雅之(東北大学東北メディカル・メガバンク機構)
実行委員長 荻島 創一(東北大学高等研究機構未来型医療創成センター/東北メディカル・メガバンク機構)